あなたの現在の読書時間は?
最初からな失礼質問かもしれませんが、いま、あなたの読書時間は、自分の生活の中で、どれくらいの割合を占めていますか?
あなたが男性か、女性か、女性ならば結婚しているか、独身か、主婦専業(本書はビジネスマン向けに書いていますが、奥様業で手に取る方もおられるでしょうし、ご主人の買ってきた本を読む、という方もおられるでしょうから)か、OL生活をしているか、子供がいるかいないか、子育てが終わったか、まだ子育ての真っ最中か、いろいろ条件によって変わってくるでしょう。
受験生か受験勉強のために費やす時間が、学校の授業時間を除いて、毎日平均、三時間から四時間といったところでしょうか。それと同じ三時間から四時間、毎日かかさず読書する時間があったら、これはもう、非常に幸福です。
なかなか、それだけの時問を読書に当てることは、できないでしょう。
通勤電車を書斎に変えるには?
あなたが、通勤生活をしているビジネスマンかOLでしたら、通勤の電者の中を読書時間に当てることができますから、往復で一時間ないし二時間の読書時間を確保することが、できるかもしれませんね。
しかしそれも、ラッシュ・アワーにぶつからなければ、の話です。
往復の通勤電車にが必ず猛烈なラッシュにぶつかるようでしたら、ノンビリと読書しているどころではありません。
あなたが魅力的な女性でしたら、痴漢の心配もする必要が出てきます。
こうやって考えていくと、日本のビジネスマンが生活の中から確保できる読書時間は、休日にタップリ読書できて、それで平均時問を稼げたとしても、せいぜい一時間あるかないか、といったところでしょうか?
それも、よほど読書が好きで強い意志で苦労をしなければ、ひねり出すことが難しいと思います。
それで、あわただしく生活に追われて、新聞を読んで週刊誌や漫画雑誌を見て、なんとなく読書をしたような気分になって「お茶をにごして」済ませてしまっている、そんなことはありませんか?きっとあるでしょう。
これまでの読書方法で読書していると?
人によって生活条件にバラつきのある、こんな話をしていっても、きりがありませんね。
そこで、最高に条件がよくて、毎日かかさず。二時間の読書時間を確保できる、と仮定して、ちょっと考えてみましょう。
平均三時間で、いったいどれほどの量の読書をすることができるものでしょうか?
データをとったところ、日本人の平均読書スピードは、一分間に四百字であることがわかりました。
そして、本の一頁にどれくらいの活字が印刷されているかというと、昔の本で八百字、最近の本で六百字ぐらいです。
昔は、なんでもかんでも倹約という時代だったので、頁にギッシリとたくさんの活字を印刷して、余分な紙を使わないように節約したのです。
現在では、それと逆に、活字がギッシリ印刷されていては読みずらいし、速く先へ読み進むことができないので、スカスカに印刷されるようになりました。
たとえば、頁あたり八百字で印刷された本の百ニ十頁と、六百字で印刷された本の百六十頁では、字数が同じ九万六千字ですから、読むのに必要な時間は同じはずです。
ところが、実際に時間を測りながら読んでみると、六百字で印刷された百六十頁のほうが、八百字で印刷された百ニ十頁より、速く読めるのです。
最近のスカスカ印刷を苦々しく思っている人も識者の中にはいるようですが、これは万事にスピードを追求する、時代のニーズと言うべきでしょう。
またちょっと脱線しましたが、六百字の本を三時間、まったく休まずに読んだとすると、三分間で二頁を読める計算で、その六十倍ですから、百二十頁を読むことができるわけです。
そして、出版されている本の頁数が、かなりバラつきはありますが、平均して三百頁というところでしょうか?
つまり、二日ないし三日で一冊の本を読み終える、ということです。
そうすると、一年の三百六十五日、かかさずに読書することができたとして、いったい何冊の本を読むことができますか?
単純計算で、せいぜい百五十冊ぐらい、という数が出てきます。
十年で、千五百冊、五十年でも、たったの七千五百冊です。
これでは出版量に追いつけない!
学者でもないかぎり、とうていこれだけの冊数は読めたものではありませんが、がんばって仮にこれだけ読めたとして、出版されている本の何パーセントぐらいでしょう?
最近は、たいていの本が文庫に収録される時代になりましたから、ちょっとここで、文庫本だけに限って、どれくらいの本が出版されているか、考えてみましょう。
角川文庫、新潮文庫、岩波文庫、集英社文庫、文春文庫、中公文庫、徳間文庫、河出文庫、講談社文庫、光文社文庫、ちくま文庫、春陽堂丈庫、ハヤカワ文庫、富上見文庫、旺文社文庫、創元推理文庫、桃園文庫、二見文庫、サソケイ文庫、ケイブンシャ文庫、知的生きかた文庫、天山文庫、双葉文庫、朝日ソノラマ文庫、広済堂文庫、現代教養文庫、PHP文庫……。
まだあるかもしれませんが、順序不同でちょっと考えただけで、これだけの数が出てきます。
各社、出版点数の多い少ないのバラつきがありますが、とにかく毎月、新刊舎が必ず出てきます。
それが平均十点だとして計算すると、前にあげただけで二十七社ありますから、廃刊になった社を除いて計算しても、毎月、二百五十点強もの新刊書が出版されるわけです。
文庫本に限ってさえ、毎月、一人の人間が一年間に読める可能冊数を既にオーバーした点数が書店の店頭に並ぶわけです。
これを片端から読んでいこうと思ったら、それこそ、エッチラオッチラと自転車で新幹線を追いかけるようなものです。
現在の読書方法では絶望的
しかも、忘れてはいけないのは、あなたが読書を始める以前に、過去において、すでに膨大な数の本が出版されている、ということです。自転車と新幹線の例でたとえるのならば、前日、前々日に出発してしまった新幹線を自転車で追跡するようなものです。
新幹線が故障でストップする(大部分の出版社が不況で倒産する)ような事態でも起きないかぎり、絶対に追いつけません。
そして、そんな事態はまず起きないでしょうし、起きた時には、第三次大戦とか、第二関東大震災とか、日本の社会情勢そのものが大混乱におちいっているときで、とうていノンビリ読書しているどころではないでしょう。
あなたのこれまでの読書法では絶望的だ、ということが理解できましたね?「……文庫の百冊」というような過去の名作から読んでいったら、近年の名作は全部、見落としてしまうことになります。
近年の名作・傑作の選択基準は?
過去の名作については、すでに評価がかたまっていますから、選択の基準に迷うことは少ないと思いますが、それでは近年の名作は、どうやって選んだら良いのでしょう?
新聞や雑誌に発表される、ベストセラーは、はたして基準になるでしょうか?
いえ、良く売れている作品だから、すなわちそれが折り紙付きの優れた作品だ、ということにはなりません。
最近のベストセラーのランキング上位の作家の作品は、「金太郎あめ」と陰口をたたかれている作品がほとんどです。
金太郎あめというのは、どの部分で切っても同じ金太郎の絵が断面に現れる工夫をしてある昔ふうのあめで、そのことから、「どれもこれも似たような人物設定で、似たようなストーリー展開で、似たような結末に落ち着く」という意味の悪口として使われているにわけです。
「ありゃあ、水戸黄門だよ」というのも、ほぼ同じ意味の悪口です。
駄作が世に出回る構図
ベストセラーのランキングが必ずしも優秀な作品の基準にはならないし、かといって全部の本を読んでいることは不可能なので、それならばと、映画化された作品、テレビドラマ化された作品を、と読んでいる人もいます。
しかし、これも優秀な作品の基準になるわけではありません。
これという選択の基準が存在しないので、映画化、テレビ化された作品に、実に多くの人が飛びついていきます。
その結果、そういう作品は、内容の優劣にかかわらずベストセラーになる、という怪現象が起きます。
いいえ、それでも、それがその作家の第一作の場合には、優秀な作品である確率が高いから良いのです。
というのも、映画やテレビの担当者が、ヒットさせなくては白分の首がかかるので、真剣になって内容を吟味するからです。ところが、二作目以降がいけないのです。
一作目がヒットすると、その原作者の知名度も、ある程度は浸透しますから、担当者としては、無名の作家の優秀作品を新たに掘り起こす苦労をするよりは、多少は内容的に劣っても、同じ原作者の作品を扱うほうが危険率が低いので、その作家の作品を続けてドラマ化しようとします。
柳の下のドジョウにご用心!
「柳の下の二匹目のドジョウ」という言葉がありますが、映画やテレビ業界では、その言葉をもじって、「柳の下には、四匹まではドジョウがいる」と言っているくらいです。
ところが、一人の作家が、そうそう傑作ばかりを書き続けられるものではありません。「一生の間に、自分で満足のゆく作品を書くのは、六作が限度である」と言った作家もいるくらいです。
そのとおりで「本陣殺人事件」「獄門島」「犬神家の一族」「悪魔の手鞠唄」「八つ墓村」と大ヒットを飛ばした横溝正史も、過去の作品がどんどん掘り起こされて文庫に収録されるにしたがって、質が低下していきました。
これは、別に私が横溝氏の悪口をご言っているわけではなく、横溝氏自身が角川文庫の「真説・金田一耕助」の中で述懐しているくらいです。
現在、小説部門のベストセラーの上位を争っている赤川次郎と西村京太郎の両氏も、本当の傑作は、ベストセラー作家になる前に書いたものの中にあります。
もう速読法以外にない!
ベストセラー・ランキングが優秀な本の基準にはならない、映画化、テレビ化された原作も優秀な本の基準にはならない、となったら、あなたは、いったいどういう基準で、読書する本を選びますか?
ベストセラーにならず、映画化もテレビ化もされずに、書店の棚の隅で眠っている本の中に、もしかしたら、あなたの今後の運命を、あなたに本人ではなくとも、あなたの家族の運命を変えてしまうほど重大な情報なが書かかれている本が、あるかもしれないのです。
そうい貴重な本を見逃してしまったら、惜しいとは思いませんか?惜しくないはずがありません。
では、いったいどうやったら、そういう貴重な本を見逃さないことができるでしょうか?
あなたが超能力者ででもないかぎり、頼りになるマニュアルがないのですから、出版された本を片っ端から読んでいくしか、方法はありません。「そんなことをしていたら、お金がいくらあっても足りないし、第二出版された本を片っ端から読んでいくような暇な時間があるわけがない。
と、あなたは答えるでしょう。
あなたへの回答、ジョイント速読法
そんな「悩めるあなた」への回答、福音が、これから本書でわれわれが紹介しようとしている、本を速く読むテクニック、ジョイント速読法です。
われわれの場合ですと、新刊書は書店の立ち読みですっかり読んでしまい、自分にとって必要な情報が書かれている本であるかどうかを見きわめて、うん、これは必要だ、ということになってから、初めて買ってきます。
ですから、せっかく高いお金を出して買って帰ったのに、読んでみたら無内容な本で、ドブにお金を捨てたような裏切られた気持ちになってガッカリした、ということがありません。
あなたも、ジョイント速読法の訓練によって読書スピードが百倍になれば、一分間に四万字という驚異的なペースで読めるようになりますから、楽々そういった芸当ができるようになります。
そこまで行かず、十倍程度だったとしても、分速四四千文字の読書能力ですから、ふつうの本なら三十分で読破できます。
その能力で五分も立ち読みすれば、全体の六分の一が読めるわけですから、その本が自分にとって必要であるか否か、ぐらいの判断は下せます。
誰でもできるジョイント速読法
百倍と気楽に言うと、あなたは驚くかもしれませんね。三百頁の本を、ほんの五分前後で読んでしまうわけですから。
ところが、ジョイント速読法で百倍の読書スピードというのは、そんなに難しいレベルではありません。
よくご存じのソロバンにたとえれば、せいぜい一級か、初段といったところでしょう。
ジョイント速読法の教室レッスンは、三倍から十倍というカリキュラムで受講生を教えていますが、それでも過半数が二十倍から三十倍になり、一割ぐらいの受講生は、百倍にもなってしまいます。
それも、せいぜい一か月内外(週一回、九十分のレッスンで)の授業期間で、ですから、右のソロバンのたとえがオーバーではないことが理解していただけるでしょう。
日本古来のソロバンは、五段、十段といった高段者になってきますと、努力プラス才能で、誰でも高段位を取得できる、というわけではありませんが、一級、初段ぐらいでしたら、努力次第で誰でも取得できます。
それと同様で、百倍の読書スピードには、ちょっとした努力を続けていくことで誰でも到達することができます。
趣味的な速読法と実利的な速読法
中にはジョイント速読法の訓練で、千倍、一万倍もの「超猛スピード」に達する速読名人もいます。
それでは、そんな名人、達人と比較して、十倍の人がどれだけ劣っているのかと考えてみると、十倍の人が五分で読み終わる文章を、一万倍の人は千分の三秒、瞬時に読み終わってしまいます。
確かに、倍数で考えると千倍で、途方もない大差のようですが、時間で考えると、たったの五分しか差がありません。
どんなに倍数を上げて時間を短縮していったとしても、ゼロ以下の時問というのは、存在しないのです。
十倍では、ふっうの本を読むのに三十分ぐらいかかりますが、教室レッスン終了後も訓練を続けていくと、三十倍程度にまで能力を高めることは、それほど難しくはありません。
そうすると、ふつうの本なら十分で読めるようになりますが、一冊を十分で読める、というのだったら、実利的にはそれで充分なのではありませんか?
それをはるかに越えた速読名人になろうというのは、これはもう、趣味の世界です。
もちろん、速ければ速いにこしたことはありませんが。
ジョイント速読法は修得方法がやさしく、タイトルに唱ったように、一日で簡単に二倍三倍の読書スピードにアップしますし、人によっては、同じ一日の内に百倍にまでなってしまう人も(もちろん例外的に素質のある人ですが)います。
それでは、いよいよジョイント速読法の中身に入っていきましょう。
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