三分割ブロック読み
並列処理による速読法の訓練として、ビデオ教材ですと、最初は一文字ずつ順番に出てきたのが、次のレベルでは十文字ずつ、まとまって文字が現れてきます。
さらにその上のレベルでは、十五文字ずつ、まとまって文字が現れてきます。
文字が消失してしまう、という心理的圧迫と、数文字を楽譜における音符と同様にまとめて読む、という並列処理訓練とを、同時に導入するわけです。
ビデオ教材では、これまた単純にながめているだけで修得できますが、本だけで独習しようとなると、それなりに工夫が必要になってきます。
まず最初にやることは、「三分割ブロック読み」です。
これは、いったいどういう訓練なのか、と言いますと、速読で読もうとしている本の行を、一文字ずつ正確に辿っていくのではなく、一行を三ブロックに分割して考えるのです。
そして、最初にいちばん上のブロック全体の文字を見、次に、行の中央ブロック全体の文字を見、最後に、行のいちばん下のブロック全体の文字を見て、それで次の行に進んでしまう、という読み方をするのです。
一行を一文字ずつ上から順番に、ではなく、三つのブロックに分割して読むわけですから、つまり「三分割ブロック読み」です。
一文字ずつ正確に追にわなくて、はたして文章が理解できるのだろうか、という疑問を、当然、持つだろうと思いますが、これは訓練次第どころか、人によっては訓練を開始した、その日のうちに修得できる、右脳速読の中では初歩の初歩です。
現在、出版されて書店の本棚に並んでいる本は、一行がだいたい三十八文字から四十三文字の間で印刷されています。
もちろん、小学校の低学年以下向けですと、それよりも字数は少なくなります。
これを三分割ブロック読みで理解するということは、一目で十三文字ないし十五文字を同時に見てしまう、ということです。
これは、音楽家が楽譜に描かれた二小節ぐらいの音符を一目で見てしまうのと同じ程度ですから、それほど難しいことではありません。
しかし、私たちは悲しいことに、これまで、「文章を構成している文字は、印刷されている順番どおりに読んでいくもの」という習慣を、音読教育などを通じて「骨の髓まで」たたき込まれていますから、それでは、と張り切って、いきなり三分割ブロック読みで、実際に文章を読んでみょうとしても、本能が拒絶反応を起こしてしまいます。
そこで前段階として、直列処理であるが声帯のブレーキを外して読む「高速なぞり読み」を行なったわけです。
些細だが大きなジャンプ
なぞり読みから三分割ブロック読みへのステップは、ほんのささいなジャンプですが、それでも、左脳読みから右脳読みに切り替えようとしていることによる、一種の「拒絶反応」が起きます。
この本能は、すなわち左脳の本能で、これまで文章を読むことに関しては専ら左脳が受け持ってきたのですから、「一文字主義」という律儀な左脳が、面食らって反乱を起こすのも、やむを得ません。
どうすれば左脳に反乱を起こさせずに、右脳を活性化することができるか、ということですが、右脳は繰り返し述べてきたように、物事の形を認識することが得意です。
そこで、形はあるが意味を持っていない、〇、口、△など、無意味な記号を文字がわりに、行にズラリと並べて印刷してあるものを用意しました。
この、上中下の三分割されたブロックを、できるだけ素早く見て、次の行へ次の行へと移り、頁をめくって、次の貞でも同じ訓練を進めていきます。
ずっと前のほうで、「何だか子供っぽい訓練だなあ……」と感じるような訓練に出会うかもしれません、と予告しておきましたが、その一つがこれで、それ以外にも、まだまだ出てきます。
右脳を活性化する速読法の訓練には、そういう訓練が付きものなんだ、と割り切って、しばらくはがまんして、お付き合いいただくしかありません。
さあ、ちょっと取り組んでみることにしましょう。
さて、三分割ブロック読みの訓練に戻りますが、あなたは、右の記号だけの頁ですと、「上中下の三ブロックの、ほぼ中心の辺りしか見ていないにもかかわらず、それ以外の記けも、ほとんど全部、視野に入っている」ということに気がつくはずです。
視野に入るということは、すなわち、それが文字ならば意味が認識町能である、ということです。
ところがそれは、あくまでも理屈の上のことで、三分割ブロック読み用の記号だけが印刷された頁をめくっていくうちに、こうして文字の印刷された頁に切り替わります。
すると、たいていの場合、そこでガタッとペースが落ちて、三分割ブロック読λをしようとしてもできずに、視野が狭まって一文字ずっを律儀に目でたどってしまう、という現象が起きてしまいます。
頁を埋めているのが記号だけですと、記号の形状認識には左脳は全く関与しませんから、「三分割ブロック読みで眺め進むように」
と指示されると、誰でもそのとおりに、行の上中下の三ブロックだけを見て進んでいくことできます。
いかに律儀で「出たがり屋」の左脳を遠慮させるか
ところが、無意味な記りに代わって、意味を持った文字が登場してきますと、「意味のある文字を読むのは、俺の出番だ!」と、ばかりに、とたんに左脳がシャシャリ出てきて、それまで活動をしていた右脳に取って代わって、主導権を握ろうとします。
そうすると、右脳はこれまで、こと文字を読むということに関しては、主導権を握って活躍をしたという経験がありません。
ですから、練習途中に急に一軍の選手に割り込まれた、哀れな二軍の選手のようなもので、つい遠慮して、練習の場-主導権を譲ってしまいます。
そうすると、主導権を譲られた左脳は、律儀に一文字ずつたどっていく、という性癖を持っていますから、それまでの三分割ブロック読みの訓練のことなど、知ったことではありません。
たちまち、急速ペース・ダウンしてしまう、というわけです。
右脳速読を修得するためには、何とかして、文字の頁に入った時に登場してきたがる、律儀で出たがり屋の左脳に、ご遠慮願わなくてはなりません。
それさえできれば、右脳を使った上級の速読法はもう、五十パーセント以上、修得できた、と言っても差し支えないくらいなのです。
そこで、律儀な左脳に主導権を与えないために、訓練の中に制限時間の概念を導入してみます。単位は、取りあえずは十秒間です。
ジョイント速読法以外の速読流派、とくにキム式速読法の教室では、訓練時間を一分間としているところが人部分ですが、一分間ですと長すぎて、目の筋肉を痛めてしまう危険性があります。
速読法は、適当な訓練を行なえば視力にも好影響を与えるのですが、キム式速読法の教室で視力が減退してしまった、という人は意外に多いのです。
眼筋にはかなりの個人差がありますから、訓練時間を一分間に設定したままで、その危険性を回避しようとすると、速読の上達が遅くなって、とうてい「一日で五倍以上」というような、手っとり早い速読術の修得はできません。
そのためには、最も適当な訓練時間の単位が十秒間で、何の根拠もなしに十秒と決めたわけではありません。
あなたのそばに誰か家族や友人がいたら、ストップ・ウォッチを用意して、「用意、ドン!」で、三分割ブロック読みの訓練を始め、十秒が経過したところで止めてください。
頁の最後まで行ったら、次の文章の頁に進まず、最初に戻ってブ記号を見る訓練を反復するわけです。
誰も仲間がいないようでしたら、NTTの時報サービスがちょうど十秒を単位にしていますから、あれを利用するか、ちょっといい加減になりますが、口の中で、「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十』と、十まで数えて、そこで止めるようにしてください。
あなたは、与えられた十秒間で、記号だけで埋まった三分割ブロック読みの頁を、何頁まで進む(何回反復する)ことができましたか?
三頁以内という人、あなたは、自分では三分割ブロック読みをしているつもりでしょうが、実際には、三分割ブロック読みをしていません。
あなたの頭の中には、どこかに、「このピッシリ埋まった記号は、ただの無意味な記号ではなくて、あくまでも意味のある文字の代用品なんだから……」
というような潜在意識があって、一個の見落としもなく全部の記号を視野に入れつつ、同時に三分割ブロック訊みも成功させよう、と無理なことを考えています。
それが一種のブレーキになって、速度を落とす原囚になっているのです。
左脳のブレーキを働かせるな!
何度もしつこく繰り返して言うことですが、そもそも、「見落としなく、キチンと読まなくては……」というような意識が、右脳ではなく、左脳に起因するものなのです。
速読法のマスターにおいては、「全体をトータル的に、一目で把握してやろう」
というような並列処理能力を持つ右脳は、アクセルの役目をし、「全体はともかく、部分部分を正確に順序よく把握してやろう」という、手間暇のかかる直列処理しかできない左脳は、ブレーキの役目をする、という傾向が見られます。
したがって、速読法を習い始めた初期の段階では、「いかにして左脳のブレーキを外すか、作動させないか」が、上達のキイーポイントになってくるわけです。
精密に、一個の記号の見落としもなく、というような律儀なことは、絶対に考えないようにしてください。
そういう意識が芽生えたということ自体、左脳が右脳を抑制する活動をし始めて視野が部分確認のために狭まった証拠の一つなのです。
二個や三個、飛ばしてしまおうが、次の行へ進むつもりが、間を飛ばしてもう一つ先の行まで進んでしまおうが、大勢に影響はないのです。
いえ、左脳の感覚から言えば飛ばしていることになりますが、右脳はず1つと視野が広いですから、実際には、キチンと漏れなくカバーしているのです。
ただ、あなたの大脳の主導権を、依然として「優位脳」の左脳が握っているので、そう認識できない、というだけの話です。
そう、おうように構えて、もう一度、同じ三分割ブロック読みの訓練をやってみましょう。
さあ、十秒間で何頁まで進みましたか?
今度は、先刻の倍の、六頁は行ったはずです。
ですが、まだまだですね。あなたには依然として、潜在意識のどこかに、
「記号の見落としをやってはいけない、行のスジ飛ばしをやってはいけない」
という考えが残っているはずです。
長い間、左脳主体で読書をしてきたあなたが、そうそう簡単にそれまでの習慣を捨てきれるはずがありません。
左脳の本能を意志の力で克服しよう!
あなたは、三分割ブロック読みをしていて、間の行をウッカリ飛ばしたりすると、その瞬間、反射的に、「抜かしてしまった行に戻って、やり直さなくちゃ!」
という意識が、チラリと頭をかすめて、それから、「いやいや、抜かそうが、飛ばそうが、そのまま先へ進んでも構わないんだったっけ……」
という注意を思い出し、改めてUターンを中止して先に進む、ということをやっているはずです。
律儀にも、抜かしてしまった行に戻り、欠落を修復させようとするのは、もちろん、部分にこだわる左脳の本能です。
この本能は、いつまでも執念深く頭をもたげてきますから、あなたは意志の力で封じ込めるように努力を続けてください。
この左脳特有の律儀な本能を、完全には押え込むことができなくても、何割か抑制することができただけで速読法は上達しますから、安心していてください。
さあ、もう一度、三分割ブロック読みの訓練をやってみましょう。
上中下の分割された三ブロックを、ひたすら速く、ひたすら速く、最後まで行ったら最初に戻って、とにかくスピードを追求して突き進んでいきます。
記号を飛ばそうが、行を飛ばそうが、そんなことには頓着しないで、とにかく目の訓練でもしているようなつもりで、ひたすら先を急いでください。
途中で記号が飛んだか、行が飛んだか、それすらも明確には自覚できないような状況になったら、本物です。
右脳が主導権を握って、常に視野を広く保つようになった証拠です。
そうやって訓練を反復していますと、最終的には制限時間の十秒間で、十頁以上(つまり、最初から最後まで十回反復できる、ということです)の所まで進むはずです。
そこまで進むようになったら——気の短い人は、それ以前の段階で取り組んでも、いっこうに構いませんが——マークされた記号などのない、文章の頁でまったく同じように三分割ブロック読みをやってみてください。
まず最初は、記りだけで埋まった頁でやったのと同じように、ひたすら速く、ひたすら速く、を追求してやってみます。
できましたか?
全速から半速ヘギアー・ダウンして読み取り能力を追いつかせる
それぞれが意味を持っている文字で埋まった頁で同じ三分割ブロック読みをやろうとすると、なかなか難しいでしょう。
それは、どうしても、「何とか文章の意味を理解してやろう」という左脳の本能が頭をもたげてきて、直列処理しようとして反射的にブレーキが掛かってしまうためです。「これは、意味のある文字に似ているけれど、決して文字ではない。単なる紋様にすぎないんだから……」
とでも、こじつけて言い聞かせて、三分割ブロック読みをやってみてください。
そして、記号だけの頁と同じ頁数が、文章の頁でも制限時問の十秒間で行くようになるまで頑張るのです。
この辺りで、そろそろまた、あなたの疑惑の念がムクムクと頭をもたげてきたのではないかと思います。「こんな訓練が、いったい何になるんだろう?
確かに、どんどん先へ先へ進みはするけれども、ちっとも文章の意味がわかりやしない!
意味が理解できなければ、速読なんて言っても、無用のテクニックだぞ」
待ってください、もうすぐです。
文字で埋まった文章の頁で三分割ブロック読みをして、制限時間の十秒間で十頁という目標が達成できたら、ここで文章の意味を理解することをやってみましょう。
高速なぞり読み訓練でやったのと同じように、今度は読んでいくスピードを半分に落として、十秒間で五頁を読むようにしてみてください。
さあ、どうでしたか?
もし、あなたがここに述べられていることを忠実に実行したとしたら、あなたは、予想外の現象に遭遇するはずです。
三分割ブロック読みを十秒間で十頁、では全く文章の意味が把握できなかったのが、単純にスピードを半分に落としただけで、あなたは文章を構成している大部分の単語を確実に視野に捉えて、意味さえも理解しているはずです。
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