キーワード検索とビジュアル・イメージで長文も克服する脳の先天的機能~速読は必要情報を効率よく引き出すためのビジネスカ
私は速読の専門家ではありませんが、脳研究者の立場から、脳の働きと速読の可能性について考えてみましょう。
自身の経験を言うと、よく海外を含め学会関連の審査などを頼まれますが、積めば高さ20~30cmになる資料が送られてきて、閉口することがあります。
その全てに目を通す時間はない。
そこで「拾い読み」をします。
効率よく「拾い読み」をする際のポイントは、まず、自分が最も必要としている情報は何かを考え、「これとあれを読めばいい」とあらかじめ決めた上で、資料を読むことです。
学術論文は日本人のそれを含めて大半が英語ですが、順を追って単語を1つずつ読んでいたら膨大な情報量を消化しきれませんから、重要な部分だけをジャンプしながら読んでいきます。
これができるのは、これまでたくさんの論文を読み、おおよそのストーリーを予測できるからです。
理屈はスポーツにも似ていて、例えばテニスの場合、トレーニングを積んだ選手は、対戦相手が球を打つ前に移動し、身構えて待っています。
こうした「拾い読み」は、実は2つのことができるからこそ可能となります。
1つは文章のカギになるキーワードを探すことです。
キーワードの数が多ければ多いほど、知りたいことのデンシティ(密度)が上がり、よく理解できるようになります。
ただ、キーワード検索といっても、パソコンで機械的に調べるやり方とは大変な違いがあります。
私か学生に何か調べてくれるように頼むと、大半はインターネッ卜にキーワードを入れて検索するだけですから、目当てのものが見つからないと、「先生、ありません」といっておしまいです。
インターネッ卜は、キーワードを検索する人の発想によって内容が片寄りがちですし、機械がやることなので一本調子です。
ところが私たち旧世代になると、インターネッ卜だけでなく、手持ちの古い論文をチェックしたり、図書館で本を探すなど、アナログ的に目的のものを検索していきます。
「アナログ的」ということは、最初に設定したキーワードに加え、同意語など他の表現にまで検索の範囲を広げ、意味的な連想をふくらませてキーワードの密度を高くできる。
これが「機械と脳」の違いです。
プログラムされた命令に従い、最後まで突き進む以外にない機械に対し、脳は柔軟で、状況に合わせながら欲しいものを手に入れる。
つまり、この脳の連想の働きを使い、情報の中のキーワードを増やすことで、「速読」が可能になるわけです。
バランスの取れた食事と規則正しい生活も速読能力アップのコツ
「拾い読み」ができる2つ目の理由は。
「ビジュアルなパターンを引き出せる」ということです。
つまり、文章を意味のあるものとして考えず視覚的なパターンとして取り出すのです。
この話でよく引き合いに出されるのが、ロシア人の新聞記者シイーです。彼に4列13行の数列表を3分間だけ見せ、それを伏せて数字を再現させたら、縦や横、あるいは対角線など、どんな順序でも1つも間違えなかった。
それどころか、彼は15年後の同じ実験でも、見事に全ての数字を再現したのです。
彼の驚異的な記憶術の秘密は、数字でも文字でも、1枚の写真のように視覚的な〃像〃として取り込むことでした。
つまり、脳にコピーしてしまうわけです。
これを「ビジュアルーメモリー」または「ピクチャー・メモリー」といいます。
シイー異常な記憶力の持ち主は極めて少ないにしても、私たちにもこのビジュアルーメモリーの能力はあります。
速読する際も、このビジュアルーメモリーの働きによって、全体の文章の構造そのものをビジュアルなパターンとして取り出しているはずです。
おそらく、言葉によるキーワードを拾うことと、このビジュアルーパターン抽出を組み合わせることで、我々は大まかなバッチ(グループ)として、本や資料などの内容を理解しているはずです。
つまり、長い文章の中のキーワードの言葉を拾いながら、バッチから次のバッチヘと目を移し、重要な部分をピックアップし、それによって全体を理解する。
これが、「速読」の1つのメカニズムです。
これを、脳科学的な観点から説明してみましょう。
前述した言葉の「キーワード検索」を含め、一般的な記憶は古い皮質(表層部分)にある海馬(かいば)に取り込まれた後、大脳皮質の様々な部分に蓄えられます。
それらの記憶を思い出すときにも、海馬から取り出されます。
しかし、ビジュアルーメモリーの場合、まだ研究が進んでいませんが、海馬を経由しない可能性もあります。
海馬を経由するのは、「うれしい」とか「悲しい」など情動(エモーション)に結びついた記憶です。
海馬を経由しないということは、情動に無関係な画像処理の経路で記憶されるのかもしれません。
そうなると、脳の部分でいえば、視覚中枢のある後頭葉からてっぺんにある頭頂葉、また両側にある側頭葉などが関係することになります。
特に側頭葉には高次の視覚情報処理中枢があり、その中の1つの細胞が連想(キーワード検索)とビジュアル・メモリーとの両方の働きをしているともいわれています。
右脳は視覚的な認識に関係しているといわれ、一部には速読の能力を高めるために右脳を活性化させよ、との説もあります。
しかし、左右の脳は脳梁などによってつながれていて、左脳が一応、言語に関係していることだけはわかっていますが、それ以外の機能についてはっきりと分かれているわけではないといわれています。
したがって、右脳だけを鍛えるというよりは、左右両方の脳をバランスよく使うことが効果的だと思います。
それよりも、平凡すぎて意外に思われるかもしれませんが、毎日三度、バランスの取れた食事をし、規則正しい生活をすることが、脳内活性物質のセロトニンやドーパミン値を高め、記憶力や理解力を助けます。
特にトリプトファンというアミノ酸はセロトニンの体内合成に不可欠です。
トリプトファンは動物性タンパク質にたくさん含まれているので、しっかりと肉を食べましょう。
ただし肉だけでなく、炭水化物や野菜などと一緒に食べないと、トリプトファンは吸収されにくい。
また体内リズムとの関係で、午前中に太陽光に当たると、脳が活性化されます。
速読力を高めるために、こうした知識も参考にしてもらうといいでしょう。
山元大輔(やまもと・だいすけ)
1954年東京都生まれ。東京農工大学農学部卒業後、同大学院農学研究科修士課程修了。
理学博士(北海道大学)81~83年まで米ノースウエスタン大学医学部薬理学教室で博士研究員。
帰国後、三菱化学生命科学研究所脳神経生理学研究室主任研究員。
99年~03年早稲田大学人間科学部教授。
03年より同大学理工学部敦授。『脳と記憶の謎』(講談社現代新書)、「脳が変わる!?」(羊土社)など、著作多数。
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