川村明宏会長のおはなし
私の速読研究の始まりは、45年以上も前にまで遡ります。
私は本が大好きで、日ごろからジャンルを問わず読書を楽しんでいるのですが、ときには読み応えのある分厚い本に挑むこともありました。
繰り返し何度でも読みたい名著ほど分厚く、読むのに時間がかかります。
この本は、本当に素晴らしいのだけれど、いったいいつ読み終えることができるのだろう…と、思わず考えてしまったことは多々あります。
何十回も読みたい本ほど、どういうわけか分厚いのです。
世の中には素晴らしい本がたくさんあるのに、読みこなすのにこんなに時間がかかるのでは、一生に1回読むのが精一杯。生涯で読むことができないまま、終わってしまう本は、山のようにあるはずです。
そう考えたとき、呆然としてしまった瞬間がありました。
そこで、私は本を速く読む、「速読」の研究を始めることを決意しました。
「速読」と言っても、当時は本を速く読む技術は世の中に確率されておらず、情報は何もありませんでした。
今でこそ、速読トレーニングのベースとなる、眼筋トレーニングやブロック読み、脳の可塑性や汎化作用については、速読の世界では当たり前のように語られています。しかし、私が速読研究を始めた当時は、そのような話はどこにもありませんでした。
そこで、私は、まずはペラペラと本をめくるスピードを変えながら、人はどのように文字を速く認識できるのかから始めました。それから、チラシの文字やイラストを切り抜いて、ランダムに紙に貼り、パラパラ漫画のようなものをつくってることから、メトロノームを使って自分の手で紙をめくるスピードを調節したりと、どうしたら速読ができるようになるか、試行錯誤の連続でした。
そんなとき、1980年代になると、コンピューターが市場に出始めました。
コンピューターといっても、今のようなハイテクなものではありませんが、それでも、画面に一定の速度で文字を出すことができるコンピューターは、どうしても手でめくるスピードではブレが生じる欠点をカバーしてくれるもので、速読トレーニングと非常に相性がいいと考えたのです。
こうして、コンピューターを導入することで、私の速読研究は加速しました。
私は眼の構造や脳科学などの知識はありましたが、実際、この研究で重要なのは、そういった机上の知識よりも、速く読めたときの「結果」から、「なぜ、速く読めたのか」を探り出すことでした。
速く読めた結果は、誰にも曲げることができません。
だからこそ、理論より結果が大切でした。
地道な研究の末、ある程度速読術が完成に近づいたとき、今度はなぜ、この速読法によって本が速く読めたのか原理を示さなければなりません。
速読は魔法ではないのです。速く読める根拠が必ずあるはずですし、もし、理論が実証されれば、どんな人も同じようなトレーニングをすることで、同じ結果が期待できるはずです。
こうして、私はこの速読法が脳科学の理論と一致することを確認するところまで、研究を進めることができました。
これが、多くの方にぜひ知っていただきたい川村ジョイント速読術なのです。